【 感性の共有は人をつなぐ 教育の道から花屋の道へ

 】

　花屋になる前、野口さんは教育の道を目指していました。

教師だった父の影響が大きかったと言います。

ある時、父の教え子が育児放棄を受けてしまい、施設に入ることになります。

突然に居場所を失ってしまった教え子を放っておけず自宅に呼び、一緒に生活していた時期がありました。

野口さんは妹ができたみたいで嬉しかったそうです。

しかし、学校外で生徒と関わることが問題視され寄り添いきれず、彼女のその後は分からなくなってしまっそうです。

学校というものの限界を感じた野口さんは「お店を持てば、自分なりの寄り添い方ができるかもしれない。」と考えました。

その頃に知り合いの花屋を手伝い始めたことが、花屋になるきっかけとなりました。

　「花は、『綺麗だね』『なんでこんな柄なんだろう』とその時の感性を共有することができます。

名前も知らない人と花を通じてつながることができる。

素敵だなぁと花屋で勤め始めてから今の今まで、ずっと感動しています。」

花そのものというより、花を通じたつながりを野口さんは大切にされていることが伝わりました。

【ハッピーの種を蒔く町の花屋さん】

　花屋SPROUTでは、ワークショップや縁日を開催したり、落語家や書道家がきてイベントを開いたり「集い、つながる場所」を提供しています。

それはお店の中だけではありません。

学童で花の生け方や花束の作り方を教えたり、家庭環境に不安を感じている高校生への体験づくり活動にも協力しています。

活動からかつて教師を目指した子どもたちへの思いが伝わります。

お店に子どもが来た時には、一輪プレゼントすることもあるそうです。

「『お花をもらって嬉しい』という経験が、いつか誰かにプレゼントする思いに繋がるかもしれない。

自分に出来ることは目の前の人を喜ばせたり、寄り添うこと。

その連鎖が大きな力になると思うし、それを繋いでいきたい。

花屋を選んだのは出会いもありましたが、お花を贈る人も贈られる人もハッピー。

贈る人から感謝され花屋もハッピー。

こんなハッピーの多い仕事もないかなぁと感じています。」

花と人、場所と人、人と人の出会いの芽。

たくさんの芽が出ることを喜ぶ野口さん。

お店の名前がピッタリだなぁと感じました。