
【電子版】太鼎堂便り2026年秋号 「治る」の本質と現代を生きるからだ 鍼灸師 村上裕彦
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横浜 鶴見にある鍼灸院が
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「治る」の本質と
現代を生きるからだ
村上 裕彦
尚古堂院長 1980年日本鍼灸理療専門学校(花田学園)卒業
以降40年以上にわたり、鍼灸臨床の第一線に立ち続ける実践者。
米国ボストンを拠点にハーバード大学医学部などで教鞭を執った松本 岐子氏とともに、
故 長野潔先生に師事。
現在も長野式キーコスタイルを伝え広めている。
臨床と専門教育で積み上げてきた東洋医学の知見を、一般の人々にも届く形へと翻訳する。
著書『女性に優しい鍼灸治療』静風社
長年にわたり鍼灸臨床に立ち続けてきた村上先生。
多くの患者さんと向き合う中で、からだと自然の繊細な繋がりや、鍼灸治療の本質を見出されてきました。
今回は「治る」ということの本質についてお話しいただきました。
村上 取材の依頼をもらったときに、いろいろな患者さんを思い出しました。
「治る」を考えてみると、ほんとうの意味で治っていない人が沢山います。
例えば、左肩の痛みで来た患者さん。この方は心臓の反応がバッチリ出ていたんです。
その方のお父さんが心臓病で亡くなっていましたから、左肩の痛みも心臓の関係だなと思いました(心臓がある左側に発症したため)。
何回か心臓の治療をしたら、肩はすごく良くなりました。
本人は「治りました」って言いますが、私としては完全には治っていないわけです。心臓まで治さないといけないと思うんです。
でも、本人は治ったと思って来なくなる。下手すれば今度は肩に症状が出ないで、直接心臓に出てしまう危険性もあるわけです。
だからこの人のことを「治った」と私は判断できませんでした。
本当に治ったというのと、症状は取れたけど完全に治っていないのとでは、ちょっと違いますよね。
反応もほとんどなく、脈も変な脈がなく、尚且つ症状が全くなくなったっていうのが、私たちのゴールだと思います。
本当の意味で治るというのは、時間がかかります。
そこまで含めて鍼灸のすごさを一般の方に分かってもらえたら、ずいぶん健康意識が変わると思いますね。
からだの反応と、取り巻く環境の変化
村上 昔は肝臓の反応が出たら、それに対する治療だけで解決していました。
それが、現代では二手使わないと変化し切らないことが増えました。
そういうことは昔もあったけれど、最近すっきりしない反応が多いです。
松本岐子先生が次から次へと新しい治療法を生み出す理由がわかります。
やっているうちに、効かない方が出てくるんですよね。
その理由の一つに私たちの周りに、毒が増えたことがあると思います。
『沈黙の春』という本で、化学物質が生殖器に影響を与えているということが告発されました。
今は不妊が問題になっていますけれども、そのうちの何割かは化学物質の影響じゃないかと私は思っています。
ホルモンを撹乱させてしまう物質が、今の化学物質に多いようです。
女性はヘアカラーをしたり、メイクをしたり、デオドラントをしたり、ありとあらゆるものから取っています。
だからホルモンを出せていたとしても、その力自体はおそらく弱ってきているんじゃないかと思います。
ホルモン剤を飲むことだけではなくて、 ホルモンに影響してしまうものも問題なんですよね。
不妊の場合もきっと関係があるでしょう。
こういうものが体内に入ると解毒が必要ですから、肝臓が疲弊します。
ですから、不妊で来て肝臓に反応があった場合、最近は解毒の治療をしています。
現代の不妊治療においては、必要な可能性が高いと思いますね。
自然の喪失と『治る』の本質
村上 本人自体が体に対して鈍感になってきた気がします。
四季折々に対しての反応が出ないです。
冷房や暖房だったりで、自然との接触が少なくなったことは確かだと思います。
加えて昔は、外で遊んだりして体が強かった。常に遊びの中で体を鍛えていました。
それがなくなったからか、女性の産む力も低くなってきたと思います。
私の患者さんが予定日前日に来て陣痛付けの治療をしたら、次の日出産になったんです。
子宮口が6センチまで開いたらものすごく痛くなってしまって、ご主人と相談して無痛分娩にしたんですよ。
私は昔だったら、そのまま産めたと思います。
子宮口を開くだけの力が、女性になくなってきてしまったのではないかな。
必要なことというのは、自然に入っていると思うんですよね。
昔は自宅出産があったじゃないですか。
一連の流れをなんとなく知っているから、痛いけれども生まれちゃうんだろうなというのが分かっていたと思います。
そういうことがなく妊娠出産になってしまうと、出産は痛いものだと思ってしまうよね。
そして、陣痛って重要なんです。陣痛があると、お母さんの腸内細菌が母乳や産道へ運ばれると言われています。
ですから陣痛があった後に出産すると、赤ちゃんは産道を通るときや、母乳を飲むことでお母さんの細菌を受け取ります。
それが赤ちゃんの新たな腸内細菌になるんですよね。やっぱり、自然ってよく出来ています。
必要がなかったら、陣痛はなくなっているだろうという説もあるんです。
長い将来を考えるとほんの小さな1年2年ですけれども、大切にしたいですね。
人の体というのは、それぞれに色々なことがあって、人生そのものが現れています。
その一つ一つに向き合った結果が、「治る」ということだと思います。
我々の仕事は人生そのものと向き合わないといけないですね。
取材/ゆうちゃん先生・中川
文責/ゆうちゃん先生
12月20日、川崎にて村上裕彦先生が講演します!
「鍼灸って素晴らしい!」
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東洋医学は特別な人のものではなく、毎日を心地よく生きるための知恵です。
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